本・映画の紹介

『部落解放』10月号「特集・死刑から考える」

 「死刑と差別・戦争」岸本修、「死刑と国家 大逆事件をかえりみながら」池田浩士、「死刑と宗教 悪人をめぐって」平野喜之、「死刑と人間 木村修治さんとのこと」日方ヒロコ、「死刑も終身刑もないスペインの刑罰制度改革に学ぶ」海渡雄一。

〔定価600円+税〕

 

『Q&A日本と世界の死刑問題』

菊田幸一著

 2004年刊の『Q&A 死刑問題の基礎知識』の最新の情報を入れ加筆修正した改訂決定版

〔明石書店、 1800円+税〕

 

『受刑者の法的権利 第2版』

菊田幸一著

 初版から15年ぶりの改訂版。その間、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」が成立、獄中者の諸権利は新法下で変わったのか。判例や国際基準、個別の実態等を収容、作業、外部交通、医療、懲罰等々具体的かつ歴史的に検証する。

〔三省堂、4800円+税〕

 

『逆うらみの人生 死刑囚・孫斗八の生涯』

丸山友岐子著

 1963年法務省通達から死刑確定者処遇はより非人間的な管理に変わっていく。孫の監獄闘争で良くなったこともあればさらなる管理を呼び起こしたこともあるかもしれない。彼の生きた時代は獄中処遇の転換点だったのだ。だが誰も彼の闘いを否定することはできない。丸山友岐子の代表作、必読書。

〔インパクト出版会、2017年1月、1800円+税〕

 

『死刑と憲法 年報・死刑廃止2016』

年報・死刑廃止編集委員会編

憲法に「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」とあるにもかかわらず、なぜ命を奪う死刑制度が温存されているのか。

谷口真由美、伊藤公雄、大道寺ちはる、永田憲史。

〔インパクト出版会、2016年10月、2300円+税〕

 

 福山市のクシノテラスで企画され、今年3月から展示された死刑囚の作品を中心に編まれた作品集。展覧会では大道寺幸子・赤堀政夫基金の応募作を中心に、クシノテラス独自に集めた作品も含めて独特な空間を作っていた。
 椹木野衣、田口ランディの論考も掲載。カタログとして少部数発行されたものなので、必要な方は買い逃さぬように。
〔クシノテラス刊、A4判、オールカラー44頁。税込1200円+送料200円。申込みはhttp://kushiterra.base.ec/items/3440347新宿模索舍でも扱っている〕

大学時代から、死刑制度に関心があったという筆者だけあって、あらゆる角度から取材・インタビューをして、秘密のベールに覆われている「日本の死刑制度」を可視化している。裁判員制度になり、誰もが死刑相当事件にかかわる可能性がある今日、多くの人に読んで、知って、そして考えてほしい1冊だ。表紙のデザインのせいか「死刑に直面する佐 藤大介」とも読めるのが笑えないような……まずは手に取ってみていただきたい。
〔岩波書店、 2600円+税〕

NHKで福岡発地域ドラマとして放映された同名作品の原作。帯に「田舎に引っ越してきた加奈子は、森の中でおハルさんという笑顔の素敵なおばあさんと出会う。深い森がはぐくんだ命の記憶を、少女のまなざしで瑞々しく描いた暖かな物語」とあるように、同窓会で小学生の時1年住んだ福岡県糸島に帰り少女時代を思い返す物語だ。テレビで樹木希林が演じたおハルさんは、福岡拘置所の死刑囚たちを慰問し「死刑囚の母」と呼ばれた白石ハルさんがモデルだという。『異空間の俳句たち』所載の死刑囚の句も効果的に引用されていて、青少年読者が多いであろう作品にきちんと死刑問題への手がかりが埋め込まれていて嬉しい。
〔ポプラ社、1500円+税。2014年10月刊〕

「いま語らずにはいられない」メディアをめぐる対談だが、全体の半分以上が死刑やオウム事件、司法をめぐる話題だ。死刑の諸問題満載で、ぜひ読んでおきたい1冊である。
〔現代書館、1700円+税〕

著者と交流のあった宮崎勤、小林薫、宅間守、金川真大、林眞須美さんたちを取材した2008年刊行のちくま新書に大幅加筆。〔ちくま文庫、900円+税〕